SAKUZINE#03【ゲスト:YOSTEBITSさん(前編)】

ゲストプロフィール
グラフィックデザイン、作字専門。 Project YOSTEBITS 主宰。 1996年佐賀県生。 2016年より「ハシモトナオ」名義で、某アイドルグループのファンアート制作、及びインターネット上での発表を開始。 2019年まで複数回のグループ展へのイラスト参加、ロゴデザイン、アートディレクションを経て、ファンアート活動に幕を降ろす。 同年、個人のグラフィックプロジェクト「YOSTEBITS」を発起。 映像作品、Webサイト、YouTuber、VTuber等、デジタルメディアを中心としたロゴデザインを請け負いながら、「娯楽とグラフィック」をテーマに作字作品の発表を続けている。
Contents
〈対談に至った経緯〉
たかしー YOSTEBITSさんがツイキャスで作字に対する考え方を話していたのを聞きに行って、そこでやっぱりふくださんを交えて3人で話したいなと思ったので、今回オファーしました。
YOSTEBITS 唯一来てくれたのがたかしーさんです(笑)
ふくだ 僕もあのあとアーカイブで配信聞きましたよ!
YOSTEBITS あ、そうなんですか!ありがとうございます!
ふくだ たかしーさんはお風呂に入っててチャットしか使えなかったんですよね(笑)
〈YOSTEBITSさんが作字を始めたきっかけ〉
ふくだ 僕は以前、最初はイラストを描かれていたってことは聞いたんですけど……
YOSTEBITS そうですね。うちは元々某デザイン専門学校出身で、ちょうど俺らが一年次の頃に五輪のエンブレム事件の時代で。その時の審査員の一人がうちの研究所の所長だったんですよ。その頃は授業でも事件の話とかしていて、あんまり業界に対して希望が持てなくて……。それが一因になって中退して、自分の好きなものの絵を描き始めたんですよ。
ふくだ へ〜〜!
YOSTEBITS 描いているうちに絵描きと繋がるわけじゃないですか。そのうち「展覧会とかやりたいね」みたいな話になって企画を立てるんですよ。絵描きが何かを通して伝える場合はパッケージングが必要で、当時それができるのが俺くらいしかいなかったんですよ。その過程でTheMeixの企画のロゴを頼まれたのが最初です。その次がマッシュアップのロゴですね。曲と曲を組み合わせた楽曲のジャケットを作るんだけど「この曲とこの曲を組み合わせてるから、このロゴとこのロゴを組み合わせよう」みたいな。だから入りはロゴなんですよ。タイポは元々好きで、あるとき偶然ふくださんを見つけて、ようやく“同じ穴のムジナ”を見たというか(笑)
ふくだ ははは(笑)
YOSTEBITS アイドル界隈にもそういう人いたんだと思って。たかしーさんもですけど。
ふくだ 確かにその時僕とたかしーさんはアイドルの名前で作字してましたね!
YOSTEBITS それで作字百景を買って。デザインに関しては置いておいて、とりあえず好きなグラフィックをやろうという感覚で作字を始めました。その時すでにデザインと作字には一線を引こう発想から始まってるんですよね。
たかしー 他の方の話を聞いていても、デザインの経験から作字を始める方はいるんですけど、YOSTEBITSさんの経緯は他の方とまた全然違いますね。
YOSTEBITS 多分(経緯が)逆なんじゃないかな。作字をやっていてロゴ作り始めた人の方が多いでしょ(笑)
ふくだ 確かにそうかもそれないです!ロゴから作字は結構稀なケースかも……
YOSTEBITS 作字ってそういうところがいいなと思っていて。
ふくだ うんうん
YOSTEBITS 外側に向いているというか、あんまり内々してない感じが良いですね。
〈作字の展開について〉
ふくだ 僕は今SNSで作字を投稿するか、そのグッズを作るかの2択しかなくて……なので「作字をどうやって外に向けて発信するか」みたいなところを是非お聞きしたいです。
YOSTEBITS 言っても作字歴は俺の方が短いですからね(笑)
ふくだ ははは(笑)
YOSTEBITS う〜ん、グラフィックデザイナーとして何か作る時って結局ブランドになっちゃって、それがファッションだったりプロダクトに落ち着いちゃうんです。芸術として一瞬を切り取る“静”のもの、どうしても視覚芸術とかアートの方に寄っちゃうんですね。だからグッズとかにせざるを得ないと思うです。
ふくだ 確かに……!
YOSTEBITS 作字の一番の強みを考えると“言葉”であるという点だと思うんですよ。言葉であるということはリリシズムであったりするし……。俺も色々考えたんですよ、「どうしたら芸術(アート)という方向から脱出できるか」みたいな。やっぱり“映像”しかないなと思って。もう動かすしかないなと。
ふくだ うんうん!
〈 “動”の作字〉
YOSTEBITS そういえば俺メモに書いてたな……。そう、“静”に対して“動”でないといけない。最初は作字をパッと見る、そして字を読もうとする、そしてまた見るという、3つの段階があって。この『見る・読む・見る』を繰り返すんですけど、これが人によっては『見る』だけになっちゃうし、『見る・読む』だけの人もいる。僕らみたいな作る側の場合だったら『見る・読む・見る』で完結するんですよ。
ふくだ なるほど!!
YOSTEBITS そこを強制的にギュッとするにはどうしたら良いか考えるとアニメーションとしてジェットコースターみたいに展開するしかないんですよ。そうすると“見る”という行為と“読む”という行為が凝縮されてみんな同じ状態になるんです。最近だと大原大次郎さんがディレクションしたHaKUの『everything but the love』ですね。当時TDCの大賞を獲ってるんですよ。あとKIRINJIの『AIの逃避行 feat.Charisma.com』とか。
ふくだ あ〜〜!
YOSTEBITS この2つの共通点としては、まるでジェットコースターに乗ってる状態で色んな景色が流れていくように文字が通過していく感じ。でもすぐに消えてしまうんです。これってもうエンターテインメントだと思って。作字というものを身体に取り込みながらも、ちゃんとエンタメとして消化できるっていう。
〈エンタメ思考で作字の未来を考える〉
YOSTEBITS これからやる意味としてはエンタメ思考で作る方が結果的に未来がある感じがします。先程の五輪のエンブレム問題とか某コンビニのパッケージ問題とか……デザイナーと大衆のズレが開いているからデザイン後進国と言われるんじゃないかなと。デザイナー的に理解してもらうには最初はデザインの楽しさを知ってもらわないといけないですよね。
たかしー うんうん!
YOSTEBITS だから『デザインあ』みたいな番組もあるし。最初はエンタメ的なものを作るべきかなと思ってます。娯楽的なものを作ることが作字にもグラフィックデザインにも良い影響になると思ってます。
ふくだ 僕も作字をアウトプットする時は「作字って楽しいんだよ」っていう思いを乗っけて発信してるんですよ。だから今のお話はすごく腑に落ちました。今はSNSでしか発信できてないですけど……
YOSTEBITS それこそふくださんに映像やってほしいですよ。俺はまだ全然勉強できてないから(笑)
ふくだ ははは(笑)あ、でもモーショングラフィックスでやったことありますよ。After Effectsでちょこっと動かすくらいですけど。
YOSTEBITS うんうん
ふくだ いやあでも大変すぎて……ただ完成した作字をA地点からB地点まで動かすだけなら簡単なんですけど、形を変えながら動かすのって実際のタイムラインが3秒あっても作業には3時間かかるとか……
YOSTEBITS 単純運動に加えて変化を与えながらアニメーションしていくって「これ全部手書きの方が早いんじゃないの?」みたいな(笑)
ふくだ そうなったらもうアニメーターですね(笑)
YOSTEBITS でも今後は間違いなく映像、アニメーションだと思いますよ。そうしないと結局グラフィクデザイナーみたいな人が増えすぎて、(作字が)閉じた世界になっちゃう。
ふくだ うんうん
YOSTEBITS これだけは断言したいんですけど、「作字をグラフィックデザイナーだけのものにしてはいけない!」もっと外側の人から入ってこれるようにしないと。この前たかしーさんが言ってた「『東京』の作字にはデザイン系以外の人からのいいねが多かった」っていう話を聞いた時に、まさにそれが正解だと思うんですよ。そうであるべきだと思うし。
東京
— たかしー (@ryokutya_83) January 22, 2020
左はタワー、右はツリー。#作字 pic.twitter.com/wmZhnSVbF1
たかしー 変に敷居を上げたくないですよね。僕がこのSAKUZINEを企画した経緯自体が「作字は楽しくて自由な場だから、それをもっと知ってもらいたい」という思いから始めたので、いくらでも(間口を)広げたいんですよ。
YOSTEBITS いや本当にそう!
今回のSAKUZINEはここまでになります。いかがでしたでしょうか?
作字の表現にはまだまだ可能性がありそうですよね。
YOSTEBITSさんの考える作字、そしてこれからの話。まだたくさんお話をお伺いしましたのでお楽しみに!
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