コラム 2021-12-20

現役デザイナーのかねこあみさんに、作字の制作プロセス(作り方)や作字カルチャーについて思うことを聞いてみた【SAKUZINE#04】

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現役デザイナーのかねこあみさんに、作字の制作プロセス(作り方)や作字カルチャーについて思うことを聞いてみた【SAKUZINE#04】

こんにちは、SAKUZINE編集部です。

 

この連載は、作字×ZINE×人(じん)をテーマに、「作字をする人」にスポットを当てたオンラインマガジンです。

作字をしている方、興味を持って始めた方、まだ初めてないけど気になっている方、どうやって作ったらいいかわからない方、そんな方々に向けてお届けしています。

 

4回目となるSAKUZINEですが、今回は現役のフリーランスデザイナーであるかねこあみさんにお話を伺いました。

かねこさんは普段、自主制作で作字をされるだけでなく、飲食店のロゴやVTuberさんのロゴ、更には名刺や冊子など、デザイン周りを幅広く手掛けられている方です。

 

本記事では主に、かねこあみさんが作字をされる際の制作プロセスや、作字との向き合い方について対談を交えつつインタビューを行った内容を掲載しています。

それではご覧ください。

 

【バックナンバー】

SAKUZINE#03【ゲスト:YOSTEBITSさん(後編)】

SAKUZINE#03【ゲスト:YOSTEBITSさん(前編)】

SAKUZINE#02【今回は2本立て!ゲスト:MADOKAさん】

SAKUZINE#02【2本立て!ゲスト:Miu.さん 次のお題も載ってるよ!】

SAKUZINE#01【ついにゲスト!みなせしゅんさん】

Contents

    今回のゲスト、かねこあみさん

    たかしー では、自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか?

    かねこ デザイナーのかねこあみです。フリーランスで活動をしています。よろしくお願いします。

     

    かねこあみさんのプロフィール

    1995年生まれ、神戸市出身のデザイナー。デザインの専門学校を卒業後、デザイン事務所、パッケージをメインとした印刷会社を経て、現在に至る。ロゴデザイン、作字を主軸とした制作活動を行っている。冬キャンプとラーメンが好き。

    Twitter|かねこあみ

    Instagram|かねこあみ

     

    作字を始めたきっかけ

    たかしー かねこさんが作字を始めたきっかけをお聞かせ願えますか?

    かねこ そうですね、他のところでも何回かお話をしたことがあるかもしれないんですけど、学生の頃ポスターを作る課題が出たことがありまして。でも私イラストとか描けないですし、まだ写真も上手に撮れなかったので、どうポスター作ったらいいんだろう、ってなったんですね。

    そこで、そのポスターに入れていたキャッチコピーの文字を分解したり、色味を調整したりして完成させたんです。その時に、文字をグラフィックとして構成し直すのってすごく楽しいんだなって気づきまして。伝えたい言葉の意味がもっと伝わるように文字を作ったら面白いんじゃないかなって思ったんです。

    7年前のその頃は「作字」って言葉をあまり耳にしなかったんですけど、今思うとそこから始まってますね。今でも、Instagramをさかのぼると昔のつたない作品が残ってたりします(笑)

    ふくだ ぼくの倍くらい(の期間)やられてるんですね。すごい。

    たかしー 僕も絵とかぜんぜん描けないし、写真もあんまりですし、同じような課題が出たらすごい悩むと思います(笑)

     

    作字の制作プロセス(作り方)のお話

    たかしー 実は以前、作字にまつわる質問を募集したことがあるのですが、ここからはそちらをベースにお話を進めさせていただきます。いただいた質問の中から、話題を3つほどピックアップしてみました。

    • 作字の際に使うツールやソフトについて
    • 作字の際に参考にする媒体について
    • 作字の工程(作り方)や、ブラッシュアップの過程について

     

    作字の際に使うツールやソフト

    たかしー 最初は、「作字に使うツールのお話を聞いてみたいです」という話題です。何段階かある制作プロセスの中でそれぞれどんなツールを使うのか、というお話だと思うんですけど、かねこさんが作字される時って最初は何から入りますか???

    かねこ 最初はシャーペンで紙にカリカリと書き進めるところから始めます。ラフを描くのが好きなので、この時間が一番楽しいかもしれないです(笑) おふたりは手書きのラフとか描かれますか??

    たかしー そうですね、最近はiPadで描いたりします。でもたまに紙で描くこともありますね。紙のほうが試行錯誤の過程がどんどん残っていくので、アイディアを練りやすいなあと思う時もあります。

    ふくだ 僕も最近iPadを買ったのでそちらで描いてます。

    かねこ 最近みんなiPad持ってますよね。

    ふくだ そうですね、Procreateがめっちゃ使いやすいんですよ。でも最近は、紙で描いたほうがいいかもって思い始めていたりもします。たかしーさんもおっしゃってましたけど、紙のほうが思考の幅が広がるのでブラッシュアップしやすいんですよね。

    Procreateとは?

    iPadアプリ、「グラフィック/デザイン」ジャンルで1位(2020/6/6現在)のイラスト制作アプリです。
    UIがめっちゃシンプルで使いやすい。
    価格は1,220円(2020/6/6現在)。
    買い切りタイプで、一度購入すれば以後のアップデートも無料で利用できます。

    Procreateの強いところ、弱いところ【レビュー】【プロクリエイト】 より引用

    たかしー そうですね、手軽にぱっとやりたいときも紙は便利ですよね。ラフを描いた後に使うツールはやっぱりイラレ(Adobe Illustrator)ですか?

    かねこ そうですね、イラレで完成まで持っていきます。

     

    作字の際に参考にする媒体

    たかしー 続いて、「おすすめの本はありますか?」というご質問です。かねこさん、いかがですか?

    かねこ んーオススメ、用途によりけりですが、みなさん「“作字百景”は教科書です!」ってよくおっしゃっていますよね(笑)

    ふくだ かねこさんの作品も掲載されている本ですね!

    かねこ いや~~そうですね、本当にありがたいです。あとは「現代図案文字大集成」も持ってます。私、実は作字の本ってそんなに持っているわけじゃないんですよ。どちらかといえばロゴデザインや、(デザインの)メイキングの本を買うことが多いです。

    たかしー ふくださんはいかがですか?何か参考にされたりするものはありますか?

    ふくだ そうですね……本のお話とは逸れるんですけど、あえて他の方の作品を意識して作ることはありますね。SNSって実験の場だと思っているので、こういう作り方を真似してみようかな、と思って作り方を参考にさせていただくことはあります。もちろんパクリはいけないんですけど(笑)

    かねこ 確かに私も、最近似たようなモノばかり作っているな~~と思った時は、本をぱっと開いて「こういう印象いいな」と思うものを見つけてサッと閉じる、みたいなことはやってます(笑)

    たかしー わかります、引き出しが増えるからいいですよね(笑)

     

    作字の工程(作り方)や、ブラッシュアップの過程

    たかしー 最後に、「ラフからブラッシュアップまでのプロセスが知りたい」というご質問です。かねこさんの場合、どんな感じで作られているんですか?皆さん悩みがちな部分だと思うのでぜひお聞きしたいです!

    ふくだ 一連の工程の中で、どこにどのぐらい時間をかけているのかも個人的に気になります。

    かねこ 口で説明するのは難しいなと思ったので、今回に向けて実は「作字ん」っていう、SAKUZINEっぽい文字を作って持ってきてみました(笑)

    ふくだ ありがとうございます……!!

     

    ①ラフスケッチ

    かねこ まず紙に、「こんな感じかな~~こんな形にしようかな~~」って考えながら完成まで描き込みます。これが第一段階です。かかる時間は、自主制作かお仕事かによってもだいぶ変わってくるんですけど、自主制作であればそんなにかからないです。だいたい10分~15分くらいで描いちゃいます。

    ふくだ すげ~~……

     

    ②トレース

    かねこ 次に、イラレでざっくりとトレースをします。パスでトレースできる部分はパスでトレースしますし、オブジェクト(図形)でのトレースが必要な部分は、この時点でオブジェクトを作ります。

    こちらの工程も、「こんな感じかな~~」って10分ぐらいでバシバシバシバシっとやっちゃいます。曲線のパスをたくさん引かなきゃいけない場合はもっとかかったりもします。

    ふくだ 曲線描くの時間かかりますよね、わかります(笑)

     

     

    ③整える

    かねこ トレースしたままの状態で終わるわけにはいかないので、角度を揃えたり、グレースケールで濃淡を付けてみたり、等の調整をちょっとずつ行います。今回はグレースケールで二色使ってるんですけど、黒一色で整えることも多いです。

    この工程と、次の仕上げの工程が最近は一番時間がかかっているかもしれません。

    ④仕上げ

    かねこ 形ができたら、最後に色を付けていきます。

    かねこ 色を付けると見え方が変わることもあるので、その場合は更に調整を加えていきます。今回で言うと、「作」の字がめっちゃでかいなとか、ここの角度嫌だとか、なんでここの高さ揃えてたんだろうとか、塗りつぶしの場所とか、色のバランスとか、そういう視点でちょっとずつちょっとずつ足したり引いたりしていきました。

    ▲こちらが③の工程の文字と④の工程の文字を重ねたもの。かなり細かい調整が加わっているのがわかる。▲

     

    ふくだ すごい……いや~~~~かわいいですねこの文字! 途中グレースケールで作るのいいですね。

    かねこ そうですね、初めから色を複数使いたいな~~って場合はまずグレースケールで作るのおすすめです。

    たかしー 流れを改めて見られるのはいいですね。ものすごく参考になりました!ありがとうございます!

     

     

    作字を取り巻く環境の変化について思うこと

    かねこ 以前と比べると、作字される方の人口ってものすごく増えたと思うんですね。皆さん素敵な作品を作られているので私ももっと頑張らないとなあって気持ちが生まれたりしてるんですけど。

    お二人もけっこう長い期間作字をされてると思うのですが、こういった環境の変化に対して何か気持ちの変化ってあったりしますか???

    ふくだ 僕は、人口が増えてきたからこそ、もっと心に余裕を持って作品を作ろうって思えるようになりました。マイペースっていうんですかね。ああしなきゃ、こうしなきゃ、って自分にプレッシャーをかけるのではなく、もっと自分のやりたいものを自分のペースでやってこう、と。

    埋もれたくないな~~っていう気持ちもあるんですけど、頑張ればそこから一個頭が出せるチャンスでもあるので、無理だけはしないようにやっていこうと思っています。

    かねこ 確かに無理しないのは大事ですね。

     

     

    たかしー 僕は、正直結構焦ったりはしました。でも、焦ったり急いだりすることにすごく疲れちゃった時期があって。楽しく作れるから作ってたのに、なんでこんなネガティブにならなきゃいけないんだろうって思うような時もありました。正直、「ロゴの依頼を受けさせていただきました」「デザインのお仕事をさせていただきました」みたいなツイートを見るたびに「いいな」って思ったりもします。

    でも、こういった環境の変化をポジティブに捉えて楽しむようにしたことで、昔よりはそんなに焦らなくなりました。このあいだ別の本業を始めたことで、経済的な不安が解消されたのも大きかったかもしれないです。

    ふくだ 確かに、作字がお仕事の窓口になっていて、生活に直結していると焦ってしまったりすることはあるかもしれないですね。僕も別で本職があるので、作字が一個の趣味みたいになっています。そうすると割と楽観的に続けられるんですけど……。

    かねこ そうですよね、確かに。環境によって物事の捉え方って変わりますよね。

     

     

     

    作字のカルチャーは広まってほしい?広まってほしくない??

    かねこ そういえば、どういう経緯で作字をいろんな人に知ってほしい、作ってほしいって思うようになったんですか? もちろんすごく楽しいし面白いからっていうのはあると思うんですけど、言ってしまえばライバルが増えることにも繋がるのかなと思って。こういう活動(SAKUZINE)を始められたきっかけが気になってます。

    たかしー そうですね、SAKUZINEをやろうと思ったのが2020年の春ぐらいだったんですけど、この頃いろんなものがAIで簡単に作れるようになってきてたじゃないですか。その中で生き残るためには、特徴的な作品を作るっていうのはもちろん大事だと思うんですけど、「この人に仕事をお願いしたい」って思ってもらえることも大事だなって思って。

    僕達が「人」を広める活動をすることによって、全員のプラスにはならないかもしれないですけど、少しでも「この人に仕事をお願いしたい」と思っていただけるようなお手伝いができたらいいなと思ってます。

    かねこ ふくださんはいかがですか?

    ふくだ 僕はたかしーさんからお誘いを受けたことがきっかけです。その頃の僕は作字をめっちゃ頑張ってて、SAKUZINEに関わったら「この人は普段どういうことを考えて作字してるんだろう」って知れる絶好のチャンスだなって思ったんです。

    この間YOSTEBITSさんともお話をしましたけど、作字が一つのエンタメとして確立すれば、結果的に日本のデザインも良くなっていくんじゃないかってお話もあったので、そんな感じでポジティブなことを発信していけたらいいなあって思ってます。

    たかしー 確かに、作字はデザインの勉強を始めるときの入り口としてもちょうどいいなあって思います。文字って、ちゃんと形があって意味もあって、既に完成されているモノじゃないですか。それをあえて崩したりするっていう作業なのでとっつきやすいのかなって。

    もちろん突き詰めれば難しいけど、入り口としてはすごくハードルが低いと思うので、デザイナーの方にも、そうでない方にも、ぜひ試していただきたいなあと思っています。

    かねこ なるほど、ありがとうございます!

     

     

    おわりに

    というわけで、現役デザイナーであるかねこあみさんの、作字の制作プロセスや作字カルチャーへの向き合い方について伺ってまいりました。

    かねこさんのお話はものすごく参考になるお話ばかりで終始圧倒されっぱなしでした……(笑)

    SAKUZINEでは引き続き、様々なクリエイターさんの「作字」カルチャーとの向き合い方や、作字の制作プロセスについてご紹介してまいります。

    次号以降もぜひ楽しみにお待ちくだされば幸いです!

     

    最後にいくつか告知です。

     

    かねこあみさんの作品が掲載された作字の本「作字作法」が、グラフィック社編集部さんより2021/10/8に発売されました。

    本記事でも話題に上った「作字百景」の続編のような本で、17名のデザイナーさんの作字制作プロセスやインタビューが収められています。

    ご興味のある方はぜひ!

     

     

     

    またこの度、SAKUZINEの編集メンバーが中心となり、作字図録「SAKJISM」という本を制作しました。

    幅広い作風を持った24組ものクリエイターさんの個性がぶつかり合う、「作字」の本です。

    こちらでもかねこあみさんの作品を掲載させていただいています。今回ご寄稿いただいた作品は、なんと全て新作とのことです……!!!

     

    こちらの「SAKJISM」は2021年冬のコミックマーケットにて販売いたします。2日目(12/31)東K31bにてブースを構えますので、よろしければぜひご来場ください。

    作字にまつわるオンラインマガジン「SAKUZINE」は、これからも作字のカルチャーを盛り上げる活動を行ってまいりますので、ご支援のほど、何卒よろしくお願いいたします!

     

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    Projects

    SAKUZINE
    作字に関するあれこれを発信中。

    Writer この記事をかいたひと

    みなせしゅん |ディレクター/エンジニア/デザイナー

    RYOZEN Scratch Creations代表。

    1994年生まれ。千葉育ち。
    2019年よりフリーランスで活動を開始。
    ディレクションやフロントエンド・バックエンドのコーディング・プログラミング、グラフィックデザインからWEBデザインまで、わりとなんでもやる人。

    座右の銘は「レベルを上げて実績で殴れ」。

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